天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



うそ……っ。

な、なんで……っ……天ヶ瀬くんが。


わたしをしっかり抱きしめるのは、天ヶ瀬くんで。

いつもの涼しい顔はどこかへ行って、焦った顔が抱きしめられる前に見えた。

そして、抱きしめられてわかる。
身体が少し汗ばんでいて、呼吸が整っていない。


こんな天ヶ瀬くんは見たことがない。


いったいどうして……?


すぐに身体を離されて、視線がぶつかる。


そして。


「……ケガしたって聞いて焦った」


そう言うと、心配そうにわたしを見つめる。

胸がぎゅうっと締めつけられる。


「なんで……っ、そんなに焦って」


天ヶ瀬くんにとって、今のわたしはなんともない存在で。

付き合っていたときも、別れた今も。
わたしにはなんの気持ちもなかったくせに……どうして今になって……。

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