守りたい人【完】(番外編完)
一瞬、何が起こっているか分からなかった。

そして、理解する前に触れていた唇はゆっくりと離れていく。


呆然と瞬きも忘れて、目の前の鍛冶君を見つめる。

月明りに照らされるのは、見た事もないほど真剣な表情の鍛冶君。

大人びた顔で真っ直ぐに私を見つめている。


「これでも、信じんの?」


そして、聞いた事もないほど真剣な声でそう言った。

その瞬間、止まっていた世界が一気に動き出して、そのままストンと腰から地面に座り込む。

あまりにも驚いて、言葉も出ない。


そんな私を見て、鍛冶君はそっと腕を伸ばしてきた。

そして、壊れた玩具のように固まった私の頬にそっと触れた。


「本気で好きなんや」

「――」

「志穂」


告げられた言葉に、嘘ではないと気づく。

いつものふざけた様子は微塵もなく、目の前にいるのは見た事もない1人の男性だった。

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