好きな人に恋愛相談されました。
こんなに早く目の当たりにするとは思わなくて、呆然と見つめることしかできずにいると、部活仲間が俺に話しかけてくる。
「あれ。あのふたり、ついにくっついたんかな。バスケ部の部長が高梨さんを狙ってるって噂あっただろ」
は? そんなの聞いたことねぇし。
……とは口に出せず、冷静に言う。
「……初耳」
「え、まじ? 堺、高梨さんから何か聞いてないのか? クラス同じだし仲いいんだろ? まぁどっちにしても美男美女でお似合いだし、絵にかいたようなカップルだよなぁ」
部活仲間の言っていることは一般的な感想だとは思う。
でも、嫌な気持ちが湧き上がってきて、このままだとそんな自分勝手な感情を罪のない部活仲間にぶつけて嫌な思いをさせてしまいそうだ。
そうなる前に俺は感情を押し殺し、高梨の姿を視界から外して笑顔を浮かべた。
「悪い、忘れもんしたから先帰って」
「まじか。バツつけられないようにしろよ!」
「わかってる。じゃあな」
“バツ”というのは下校時間に遅れるとつけられるペナルティで、5つ溜まると1週間の部活停止を言い渡されるのだ。
今の俺から部活まで奪われたら、本気で学校に来たくなくなる。
部活仲間が校門を出た後を見計らってすぐに帰宅しよう。
俺はとりあえず、この場から離れるために部室の方に足を向けた。