甘い脅迫生活
「どうしてだ?一人もだぞ。誰一人本心で美織を褒めてはいなかった。」
「……。」
それはそれで傷つくんですが。優雨の無意識の発言が私にちっさな針を突き刺していく。
「こんなに可愛いのに。」
「……。」
「こんなに優しく、快活だ。」
ゆっくりと、優雨の指先が私の頬を撫でる。なぜだろう。パーティーで同じようなことを言われても、きちんと笑顔を返せていたのに。
「料理も美味い。」
「嘘ばっかり。」
「本当だ。」
こんなにも、愛おしそうに、嬉しそうに、優雨が言うから、笑えない。
「なにより、落ち着くんだ。傍にいると、安心する。」
「……。」
優雨の触れる指先が、笑みが、目が、社長の時とはまるで違うから。
「美織。」
少しずつ、優雨の顔が近付いてくる。ずっと見つめ合っていた瞳は、どちらとともなく、閉じられ。
触れた唇の柔らかさに、胸がときめいた。
ほんとに、困ってる。
本当に、パーティーに出席している人たちの反応は、間違っていないと思う。
自慢の妻だと優雨みたいな大物に紹介されたら、自分の利益のために近付いている人も、そうでない人も、ありきたりな褒め言葉を口にせざるを得ない。