甘い脅迫生活
「山田さんが認めてくれてるなら、別に自慢なんていいじゃないですか。」
「……美織。」
「はい。」
なんでだろうな。優雨の目がキラキラしている気がする。ボサボサの髪でそんな目をされると、なんだか子供を相手にしてるみたいで。なのに強く握られた大きな手は男を主張する。
まっすぐに私を見る瞳は、いつかどこかで見た色。薄茶色のトパーズみたいに透き通ったその色を見ていると、どこか自分の奥底にある記憶が刺激された気がした。
どこかで、見たような?そう思うんだけど、思い出せない。
「それは、俺との結婚を美織本人も受け入れてくれているということか?」
「は?」
思い出そうと動いていた思考は、優雨のとんでも発言によって頬を張られたように強制的に現実を突きつけられた。
「え、受け入れ、え?」
鈍く動く頭を整理しようと必死なのに、笑顔の優雨は私を強く抱きしめる。
「山田にさえ認めてもらえればいいというのは、そういうことだろ?少しは俺のことを気にしてくれているのか?」
「っっ、」
切なく吐き出された言葉は、思いの外、私の胸を刺激した。好きか?と聞かれればきっと私は、違うと答えるだろう。本心を隠して、頑固に、言わないはず。
「別に、気に入る、気に入らないじゃなくないですか?貴方はそういうんじゃ、っっ、」
それを優雨が、自分を物のように言うから……
素直になってしまう。
「ちゃんと、見てますから。」
「美織。」
まっすぐに優雨を見つめ返すと、嬉しそうに笑うこの人は、私が寂しくないように、どれだけ遅くなっても、家に帰ってくる。そして朝食は絶対に一緒に食べて、笑顔で会社に行く私を見送る。
時々変な”テンプレ”を学んできて困らせることもあるけど、この人は確かに、私に心で向かってくれている。