甘い脅迫生活
「ちゃんと、見てます。」
脅迫から始まったはずの結婚を受け入れてしまっているくらいには……。
優雨とのキスが、嬉しいと思ってしまっているくらいには……。
私は貴方のことを、意識している。そう言える。
だけどそれを言ってしまえば、何かが壊れてしまう気がした。
「さて、ご飯にしましょうか。」
「……ああ。」
だから私は、それ以上踏み込まない。馬鹿なことに、この関係を終わらせたくないから。
そして優雨は、私が嫌がることは絶対にしてこない。それが分かってるから。私ははぐらかす。優雨が無理矢理聞いてこれないことを良い事に、全てをはぐらかすんだ。
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「……はぁ。」
優雨はいつもと変わらない。いつも笑顔で楽しそうに、私を口説く事は忘れずに。甘え上手で、朝が弱くて。最高の旦那さん。
数字を重ねるキスは私を幸せにもし、苦しくもさせた。
この関係がよく分からずに、混乱しているのは私だけなんだろうか。何も知らない会社の人たちは私は幸せいっぱいの変わり者だと思っている。
それもそうだろう。社長夫人なのにこんな末端の配送部の事務をまだ続けているんだから。