甘い脅迫生活
当たり前に誰も私の事情なんて知らない。お母さんにはああ言われたけど、今まで通り借金の返済をやめるつもりはなかった。
私には選択肢がない。借金のことを考えると、転職なんて考えている余裕がないんだ。
そして優雨の態度。それも私を混乱させる一因だった。
とにかく私に甘い優雨は、まるで私たちが普通に恋愛を経て結婚したかのように接してくる。
確かにキスはする。だけどそれだけで。私たちは最近出逢ったばかりの赤の他人だというのに。
その距離の近さに、正直、戸惑っていた。
「お疲れ様ー。」
「お疲れっすー。」
最近、色々あったからだろうか。今日はちょっと熱っぽくて。色々考えたいこともあって、早退することにした。
ある程度仕事を片付けて、さえちゃんに挨拶をした頃には、少し症状は悪化していて、駅まで歩いていくのも辛いほど。
駅まであと数分、という所で限界が来た私は、その辺の路地に座り込んでしまう。
鼓動が耳元で聞こえるほど、熱さに比例して心臓が高鳴る。
あー、これはやばい。
無理を押して朝出てきた自分を後悔していた。
ゆっくりと、熱が私の意識を追い詰める。あ、これは落ちる。そう思った瞬間。
「あの、大丈夫ですか?」
誰か男の人が、私に話しかけてきた。
もう目も開けられない私は、返事すらできなくて。
「西園寺、美織?」
男の人がそう呟いたところで、意識は闇の中に引き込まれていった。