バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 もう、やめて。そんなにここが気に入らないなら、ここでお式を挙げなくてもいいでしょ?

 フランスのべルサイユ宮殿だろうが、サンクトペテルブルクのエカテリーナ宮殿だろうが、あなた好みのゴージャスな所で結婚式をすればいいじゃない。

 ここに来てくださったお客様方の幸せな気持ちに水を差すようなこと、しないで。

「ねぇ、そこのあなた」

 モニターを見ながらクスクス笑っていた大宮様が、いきなり真顔になって私の方を見た。

 つい睨みつけるような目で彼女を見ていた私は、ハッとして身構える。

「あなた受付係でしょ? 黙ってチョロチョロ後をついて回ってないで、私に説明ぐらいしたらどうなの? ここのスタッフは教育がぜんぜんなってないのね」

「……申し訳ございません」

 お次はスタッフへのダメ出しか。

 型通りに頭を下げて謝罪しながら、私は苦い思いをぐっと飲み下した。

 この手の女性を本気で怒らせるのが一番怖いということは、同じ女が一番よく知っている。

 少しでも逆らうような気配を見せようものなら、彼女は自分の持てる力のすべてを使って、こちらの社会的な評判を地に落とそうとするはずだ。

 副社長もそれをわかっているから、彼女になにも言わないんだろう。
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