バージンロードで始めましょう～次期社長と恋人契約～

「ここは黙って俺に付き合ってくれ」

「……え？」

「頼む。彼女をうまくやり過ごしたら、この場の誤解はすぐに解くから」

　パチパチと目を瞬かせながら副社長を見上げると、絵に描いたような端整な顔に、触れ合うほどの至近距離で見つめられて心臓が大きな音をたてた。

　でも彼の冷静な目つきから、言わんとしていることを理解した私は、すぐに自分の頭を切り替える。

　これは、大宮様を黙らせるためのお芝居なんですね？

　そういうことなら喜んでお手伝いします！　だってこのままあの人に勝ち誇らせておくなんて癪だもの。でも……。

『本当に、ちゃんと誤解は解いてくれるんですよね？　約束ですよ？』

　そういう意思をきっちりと込めた目で、私も彼に切々と訴えた。

　副社長と私が恋人同士だなんて噂が広まったら、天地が引っくり返るような大騒ぎになってしまう。そんな大スキャンダルの渦に巻き込まれるのはさすがにご免だ。

　私の意を汲んだらしい副社長が小さくうなづくのを確認してから、私はチラリと大宮様の様子を窺った。

　予想外の展開にポカーンとお口を開けているその顔は、見ていてちょっと気分いい。

　だから私もつい悪ノリして、副社長の胸に軽くもたれかかったりして。