バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「『一刻も早く、一組でも多く、幸せな挙式を手掛けたい』か。本当にその言葉通りの熱意だな」

 鏡にかぶせたレース生地にサンゴのピンブローチを刺しながら、私は『ん?』と小首を傾げた。

 そのフレーズ、なんか聞き覚えがある気がするんだけど、どこで聞いたんだっけ?

「なんだ覚えてないのか? お前が自分で言ったんだよ。半年前の入社試験の、面接のときに」

 副社長のその言葉がきっかけとなり、私の記憶の糸がスルスルと解けていく。

 あぁ、たしかにそんなことを言った。……ただし、あまり褒められないような状況下で。

 過去にやらかした小恥ずかしい記憶を思い出したところで、さらに疑問が湧く。

「あれ? でも副社長って、面接にはいらっしゃいませんでしたよね?」

 こんなイケメンが面接官だったら嫌でも記憶に残っているはずだけど、覚えていない。

 なのにどうして私が言った言葉を知っているの?

「面接室の防犯カメラを通して、別室で見ていたんだ。たしか最後の質問だったよな? 『ボヌシャンス迎賓館の入社試験に落ちたら、どうしますか?』って。お前、あのとき自分がなんて答えたか覚えてるか?」

 うっと言葉に詰まった私は、茶化すような顔つきで聞いてくる副社長からオドオドと視線を逸らした。

 はい。覚えてます。覚えてるからこそ、あんまり答えたくないです。
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