バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
―― キュッ……
私の心の動揺を読んだように、私の右手を掴む彼の手に力が込められた。
この真剣な瞳に込められた真意を、この人の胸の内を知りたいと思う自分がいる。
でも、ダメなんだ。この先に進んじゃダメ。
そんな風に思い惑う私の目の前で、彼の唇がゆっくりと開いた。
「亜寿佳、俺は……」
「こんにちはー! ミュージック・ブーケ事務所ですけど、どなたかいらっしゃいますか!?」
副社長の声に被さるように、正面玄関の方から大きな声が聞こえてきて、場の空気が一瞬で現実味を帯びる。
我に返った私は弾かれたように副社長から離れて、ことさら明るい声を出した。
「あ、事務所の方たちがいらしたみたいですね。私、お出迎えします」
「あぁ、頼む。庭の方に案内してくれ。俺もレコードを片付けたらすぐに行くから」
さっきまでふたりの間に漂っていた空気は夢だったかのように、私たちはあっという間にいつも通りに戻ってしまった。
そのことにホッとする気持ちがほとんどで、でも二割くらいは残念に感じている自分の気持ちに戸惑う。
そんな複雑な感情を振り切るように急ぎ足で玄関に向かい、事務所の人たちを出迎えた。
私の心の動揺を読んだように、私の右手を掴む彼の手に力が込められた。
この真剣な瞳に込められた真意を、この人の胸の内を知りたいと思う自分がいる。
でも、ダメなんだ。この先に進んじゃダメ。
そんな風に思い惑う私の目の前で、彼の唇がゆっくりと開いた。
「亜寿佳、俺は……」
「こんにちはー! ミュージック・ブーケ事務所ですけど、どなたかいらっしゃいますか!?」
副社長の声に被さるように、正面玄関の方から大きな声が聞こえてきて、場の空気が一瞬で現実味を帯びる。
我に返った私は弾かれたように副社長から離れて、ことさら明るい声を出した。
「あ、事務所の方たちがいらしたみたいですね。私、お出迎えします」
「あぁ、頼む。庭の方に案内してくれ。俺もレコードを片付けたらすぐに行くから」
さっきまでふたりの間に漂っていた空気は夢だったかのように、私たちはあっという間にいつも通りに戻ってしまった。
そのことにホッとする気持ちがほとんどで、でも二割くらいは残念に感じている自分の気持ちに戸惑う。
そんな複雑な感情を振り切るように急ぎ足で玄関に向かい、事務所の人たちを出迎えた。