バージンロードで始めましょう～次期社長と恋人契約～

「花嫁様。お次はお色直しですので、ブライズルームまでお願いします」

「あ、はい」

　進行役の係りが、お色直しをしている間の余興の説明をしている声を背後に聞きながら、私と花嫁様は屋敷の中に入って階段を目指した。

「お色直しって、どれくらいの時間で終わるんですか？」

　気分が高揚しているのか上気した頬でニコニコと聞いてくる花嫁様に、私も微笑みながら答える。

「ドレスチェンジには、十五分ほどかかります」

　和装と洋装をチェンジする場合は、衣装もメイクもヘアスタイルもぜんぶガラリと変えなければならないので、結構な時間を要する。

　でもドレスチェンジだったらそんなに時間はかからない。ハウスブライダルはブライズルームがすぐ近くにあるから、さらに時間短縮になる。

　花嫁様の背後でヴェールを持ち上げて、階段を上がる動作を手助けしながら、私は内心で苦笑していた。

　それにしても『終わる』なんて縁起の悪い言葉をスタッフが口にしようものなら、副社長から特大の雷が落ちるところだ。

　神経を尖らせている私たちと違って当事者の花嫁花婿様は、わりと無頓着だったりするんだよね。

「わあ、怖い。ドレスの裾を踏んづけちゃいそう」

「どうぞごゆっくり足を運んでください。時間には充分余裕がございますので」