バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 今日の主役の花嫁様が転んでケガでもしたら一大事だ。ゆっくりゆっくり、一歩ずつ階段を上がってもらって、無事に二階に着いた時はホッとした。

 ふたりでそのまま廊下を進んでいくと、突き当りのブライズルームの前にヘアメイクさんが立っているのが見える。

「メイクさん、花嫁様のドレスチェンジをお願いします」

 そう声をかけた私の眉間が『ん?』と寄った。彼女の様子が、なにか変だ。

 メイクさんは両手で口を覆い、ブライズルームの中を見ながら青ざめた顔で棒立ちになっている。

 その明らかに異様な空気に、私と花嫁様は怪訝な表情でお互いの顔を見合って、それからメイクさんの方へ向かって足を速めた。

 なにやらブライズルームの中から、ひどく物々しい大きな音が聞こえてくる。

 いったいこれはなんの音だろう? なんにせよメイクさんの強張った表情から察するに、絶対によくないケースが発生しているのだけは確かだ。

 部屋に辿り着いた私は中をひと目見た途端、目の前のあまりの光景に頭の中が真っ白になって、メイクさんと一緒に棒立ちになってしまった。

「な、なにあれ……?」

 ブライズルームで、ひとりの女性が、なぜか大暴れをしている……?
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