バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
強張った表情で、私の胸やお腹の辺りを見ていた彼の余裕のない目から、ふっと力が抜けた。
どうやら私の体のどこにも傷がないのがわかって、自分の勘違いにようやく気がついたらしい。
ペタンと床に座り込み、天を仰いで安堵の息を吐き出しながらボソッとつぶやいた。
「勘弁してくれ……」
よっぽど『それはこっちのセリフです!』と言いたかったけど、とにかく私は破かれたブラウスを引き寄せながら胸を隠し、身を丸くするので精いっぱいだ。
さっき、あの女の人の手に赤い液体が入ったペットボトルのような物が握られているのを見て、私はとっさに花嫁様を庇った。
たぶんインクかなにかだろうと思ったけれど確証はないし、動物の血とか、もし変な薬物だったらどうしようとか頭をよぎって、ものすごく怖かったんだ。
おまけに副社長に下着を見られちゃうとか、もう最悪だ。ほんとに泣きたい。
床の上に横たわってグスグス鼻を啜っている私の体を、副社長がそっと抱き起す。そしてそのまま、彼の両腕が私の体をすっぽりと包み込んだ。
「よかった。無事で」
私の髪に小さな声が降る。肩や背中を抱きしめる彼の両腕の力強さに比べて、驚くほどの頼りない口調に、私の胸がトクンとざわめいた。
どうやら私の体のどこにも傷がないのがわかって、自分の勘違いにようやく気がついたらしい。
ペタンと床に座り込み、天を仰いで安堵の息を吐き出しながらボソッとつぶやいた。
「勘弁してくれ……」
よっぽど『それはこっちのセリフです!』と言いたかったけど、とにかく私は破かれたブラウスを引き寄せながら胸を隠し、身を丸くするので精いっぱいだ。
さっき、あの女の人の手に赤い液体が入ったペットボトルのような物が握られているのを見て、私はとっさに花嫁様を庇った。
たぶんインクかなにかだろうと思ったけれど確証はないし、動物の血とか、もし変な薬物だったらどうしようとか頭をよぎって、ものすごく怖かったんだ。
おまけに副社長に下着を見られちゃうとか、もう最悪だ。ほんとに泣きたい。
床の上に横たわってグスグス鼻を啜っている私の体を、副社長がそっと抱き起す。そしてそのまま、彼の両腕が私の体をすっぽりと包み込んだ。
「よかった。無事で」
私の髪に小さな声が降る。肩や背中を抱きしめる彼の両腕の力強さに比べて、驚くほどの頼りない口調に、私の胸がトクンとざわめいた。