バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「あ、あの、副社長。インクがスーツについちゃいますから」
そう言って彼の胸を押し返そうとしたら、ますます強く抱きしめられる。
言葉もなく私を抱き寄せて放さないこの腕が、逆に彼の心を雄弁に語っている気がした。
こんなに、心配してくれたんだ……。
無事だった安堵感と、彼への感謝の気持ちと、切なさと嬉しさで胸がいっぱいになる。
抑えきれない感情で頭と心がパンパンになった私は、広い胸にオデコを押しつけながら、彼のスーツを汚してしまうことも忘れて素直に泣いてしまった。
「あの、副社長。それでこれからどうしましょうか」
女性を取り押さえているスタッフが遠慮がちに声をかけてきて、副社長がハッとしたようにそちらに顔を向けて立ち上がった。
少し冷静さを取り戻せた私も、湿った目尻を拭いながら立ち上がる。
「そうだな。まずはこの女性の身元……」
「キミは、まだこんなことをしているのか!?」
自分の上着を脱いで私に差し出しながらスタッフに指示を出す副社長の声を、花婿様の鋭い声が掻き消した。
「キミと別れたのはもう二年も前だ! なのに未だにこんな嫌がらせを続けるなんて、どういう了見だ!」
花婿様が顔色を変えて女性に詰め寄ると、取り押さえられておとなしくなった女性の様子が一変した。
そう言って彼の胸を押し返そうとしたら、ますます強く抱きしめられる。
言葉もなく私を抱き寄せて放さないこの腕が、逆に彼の心を雄弁に語っている気がした。
こんなに、心配してくれたんだ……。
無事だった安堵感と、彼への感謝の気持ちと、切なさと嬉しさで胸がいっぱいになる。
抑えきれない感情で頭と心がパンパンになった私は、広い胸にオデコを押しつけながら、彼のスーツを汚してしまうことも忘れて素直に泣いてしまった。
「あの、副社長。それでこれからどうしましょうか」
女性を取り押さえているスタッフが遠慮がちに声をかけてきて、副社長がハッとしたようにそちらに顔を向けて立ち上がった。
少し冷静さを取り戻せた私も、湿った目尻を拭いながら立ち上がる。
「そうだな。まずはこの女性の身元……」
「キミは、まだこんなことをしているのか!?」
自分の上着を脱いで私に差し出しながらスタッフに指示を出す副社長の声を、花婿様の鋭い声が掻き消した。
「キミと別れたのはもう二年も前だ! なのに未だにこんな嫌がらせを続けるなんて、どういう了見だ!」
花婿様が顔色を変えて女性に詰め寄ると、取り押さえられておとなしくなった女性の様子が一変した。