私たちは大人になった
『喧嘩ってのは、相手と分かり合うためにするもんであって、お前がしてるのは自分のエゴを押し付けてる脅しと同じだ』
上から見下ろして突きつける言葉は私の中にも入り込んできて、情けなくてうつ向いた。
彼が私に執着していたのは、私が頑なに彼の言葉や気持ちに耳を傾けなかったからかもしれない。
“私は彼を好きじゃない”“別れたい”その私の感情を訴えるばかりで彼の気持ちなど考えたこともなかった。
『お前がこいつの事を好きだって言う、その気持ちまで否定する気はないよ。でもな、恋愛ってふたりでするもんだろ。自分の気持ち押し付けるだけなんてただの自己中なんじゃないのか?』
そうか。
私は初めから、本当に初めから、彼と恋愛などしてこないままで名ばかりのお付き合いをしていたんだ。
同じ仲間だから分かっているだろうと決めつけて、同じ方向を見ているはずと確かめもせずに。
『……ねぇ』
隠れていた影から出てきて、膝を折って同じ目線にたつ。
彼の事が嫌いだったわけではない。
好きだった。
恋情とは、違うところで。
『今まで、言ったことがなかったね。ごめんなさいとか、分かれたいとかそんな言葉ばかりで、多分伝えたことがなかった。……ありがとう』
その言葉を聞くと、彼の顔が歪んだ。
けれどそれはこれまでのとは明らかに違う。
彼はただ、本当のお別れを察知してこの言葉に悲しんでいる。
『今までありがとう。あなたの気持ちは嬉しかった。だけど、ごめんなさい』
彼は目を逸らすことをせずに、最後まで私の言葉を聞いてくれた後、ひとつ、こくんと頷いてくれた。