私たちは大人になった

太陽が庭の植物を燦々と照らす中で、リビングには優雅な朝とは程遠く、慌ただしい時間が流れている。
それぞれがそれぞれの持ち場で戦いを繰り広げるがごとく。
庭の植物に水をやる父に、朝食の支度をする母、夜のうちにタイマー予約をしていた洗濯物を干す私。
しっかりと味わう間もなく食事を終えて、手早く洗い物を済ませると各々に仕事へと繰り出した。
通勤ラッシュでぎゅうぎゅう詰めの電車に乗り込むのは毎日の事ながら多少の勇気を必要とする。
かといって、時間をずらすほどの行動力は持ち合わせていないのでなけなしの勇気で今日も電車に乗り込んだ。
電車なんて数分ごとに来るはずなのに、どの電車も超満員なんて、一体どこから湧いて出てきているんだろう、などと思う私を乗せて電車は順調に次の駅へと向かっていく。
乗換駅で人がどっと降りて、ようやく人心地つけた。

扉近くにもたれ掛かってぼんやりと車窓から流れる景色を見るとはなしに見ている。
変わったものはこれといってない。
昨日と同じ見慣れた街の景色だ。
けれど、よくよく見れば学生の頃とは変わったところもある。
アミューズメント施設がつぶれて、跡地には大型商業施設ができたし、レンタルビデオショップは回転寿司屋さんになった。

変わってないようで変わってるんだよね、本当は。

気持ちは言葉に乗らず、ため息だけが外に出た。
ため息で風船の一つくらい膨らませられるんじゃないか、なんて思うほどに最近の私はため息ばかりだ。


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