私たちは大人になった
私たちの関係が変わったのは、高校の卒業式だった。
優が好きだと認識したからといって、それまでは決して“幼馴染み”の枠からはみ出すことなく、それらしい距離感で過ごしてきた。
ただし、以前の全くのそっけないところからは少し出て、多少のやりとりは増えたけれど。
それでも幼馴染みの友好関係から逸脱したものではなかった。
卒業式の日は、生憎の雨で校門前は無数の傘で埋め尽くされていた。
それでもどこに優がいるのかはすぐにわかった。
好きだから、というドラマチックなものではなくて、単純に部活ごとに塊のできていた色とりどりの傘の中、優の傘は透明なビニール傘だったからだ。
これで最後かと思うと込み上げるものがあって、どうやらしばらく見つめていたらしい。
緩やかにこちらに顔を向けた優と目があった。
二言、三言、仲間内に声をかけたと思ったら、優は『じゃあ』と、手を上げてゆっくりとこちらに向かってきた。
県外へと進学する優と、地元に残る私。
私が動かなければ変わらない関係。
きっとこれが最後だと思ったけれど、動く勇気は微塵もなくて、うつ向く。
心の中でありがとうと呟いて歩き出した、その時。
『……一緒に帰ろ』
肩に触れた温もりと共に降りてきた言葉。
振り返ればそこには相変わらず無表情の優がいて、妙に安心したりして、何も言えずにただその瞳を見つめていた。