私たちは大人になった
「未来が予測できるとしたら、そんな楽なことはないけれど……。その分、とっても退屈ね」
「そうですね」
「あなたの行動はあなたにしか決められないもの。アタシにはとやかく言えないわ。でもね?どんな未来にも、必ず救いはあって、幸せは転がっているものよ。それが見つけられるかどうかは置いといて」
店員さんは笑って、カウンター越しにホットコーヒーを差し出してくれた。
「コーヒーはおごりよ。環境は違うけど、あなたの気持ち、分からなくもないもの」
そう言ってキッチンに目をやり、ため息をこぼす。
誰もがみんな生きていて、それぞれに同じように悩みながらもがきながら、苦しみながら、それでも生きてる。
そっと口にしたコーヒーは熱くて苦くて、でも、とても美味しかった。
「人生は最後まで、諦めなかった人の勝ちよ」
「諦めなければ……か。でも私、この恋はもう諦めてしまっているから」
「でも関係を続けたいと願うほどにまだ焦がれてるわけでしょう?成就させたいって思うことだけが諦めないってことじゃないわよ」
「え?」
「ただ想い続けるその気持ちも、あなたの気持ちをまだ諦めてないってことだと思うわ。だから良いのよ、それで。なるようにしかならないのよ」
話を聞いているうちにコーヒーは最後の一口を迎えて、お会計をすると、店員さんはわざわざ外まで見送りに来てくれた。
「ありがとうございました」と、定型文のように言われ、手を振られたので会釈をして歩き出したところで、重ねて声をかけられた。
「絶対ある、とは言えないけど」
立ち止まり続く言葉に耳を傾ける。
「思いがけないところでやって来る大逆転は、諦めなかった人だけの特権よ」