私たちは大人になった
大逆転、か。
それは逆転敗けなのか、逆転勝ちなのか……、むしろ今の立ち位置さえわからない。
でも“それで良いんだ”と世界にひとりでも認めてくれる人が居るだけで心が軽くなった。
「ありがとうございます。……諦めないってことだけなら、自信あるかもです」
店員さんは屈託のない笑顔を見せてくれたので、私は改めて会釈で返して今度こそ足を踏み出した。
優と離れた時期、沢山の人に出会いながらも動かなかった心。
会えないことで次第に波が凪ぐように穏やかになってはいたけれど、どうやら昇華されたわけではなくて、奥底に燻っていただけのようだ。
それは再会を果たしてからすぐに思い知らされた。
好きをやめることも、他の人を好きになることも、この数年間では見つけられなかった。
ハナから諦めると言う強い意思があったわけでも、諦めないと言う確固たる想いがあったわけでもないけど、それでも、こんな風になってまで優のことが好きなのも事実。
それを世間では“諦めない”というのなら、諦めないってことにだけは自信があるよ。
結論としては何が変わったわけでもない。
けれど、店員さんにも聞いてもらったこの関係の始まりを思い返しながら、雨の卒業式、叶わない恋って、どこかの歌にでもありそうだな、なんて小さく笑いさえこぼしながら足取りも軽く帰路につくことができた。