私たちは大人になった
予想だにしなかった母の言葉にポカンと口が開いた。
しまった、みたいな顔をした母は、それでもバツが悪そうに言葉を続ける。
思考が停止しても良さそうな衝撃だったけれど、耳は働いて言葉を拾うし、その意味も理解してしまう。
例えそれが、受け入れたくはないものだとしても。
「ほら、優くんのご両親。沙原さん、旦那さんの仕事で海外に行ってたじゃない?たまにね、優くんの様子はどうかって奥さんとやり取りしてたのよ」
私は相槌も打たずにただただ話を聞く。
「男の子って、あまり自分から連絡もしないし、電話したって変わりないよって言うくらいで心配だからって。それでね、今日も沙原さんからお久しぶりですって連絡が来たのよ。私だってそんなにご近所のこと詳しい訳じゃないけど、元気にしてるみたいですよって伝えたら……」
ドラマや漫画だったら、衝動的に走り出してもおかしくない展開を、私の頭は冷静に受け入れる。
「海外での仕事が一段落して、来月くらいには日本に戻ってこれそうなんですって。優くんには戻ることが決まってすぐ連絡したそうなんだけどね。どっちにしたって帰ってくるのはあのお家じゃない?一緒に暮らす提案もしてみたらしいんだけど、独り暮らしが長くて今さら一緒に暮らすなんてって断られちゃったんですって」