私たちは大人になった
『久しぶり』
先に声をかけてきたのは優で、そのあまりにも変わらない雰囲気はあっという間に高校時代の私を連れてきたようだ。
胸は苦しく、忘れたと思っていたはずの恋心は些細なきっかけで顔を覗かせる。
『……久しぶり』
賑やかな周りと真逆のふたり。
しばらくその賑やかな席を眺めるだけで、ふたりの間に言葉はない。
にもかかわらず、誰も私たちに近寄ってこないものだから沈黙が続く。
何か話すきっかけを、と探している間にドリンクが減る。
どうしようか。
なんで優は私なんかの隣に来たのだろう?
別に気まずい別れをした私じゃなくても、男友達の輪に混ざれば楽しく過ごせるはずなのに。
それとも本当に、あの別れを引きずっているのは私だけで、優にとってはもう過去のこと?
気にするような出来事ですらないってこと?
会わない間に奥底に沈めたはずの気持ちは、会ったとたんに浮上して、私の心をかき乱す。
『何飲んでるの?』
先に沈黙を破ったのも、結局、優だった。
『ウーロンハイ』
『カクテルとかじゃないんだ?女子は好きだろ、甘い酒』
『うーん、嫌いではないけど。ご飯と一緒には飲めないかも。優は?』
『俺は焼酎。飲む?』
そう言って軽い感じでロックグラスを差し出されたので、また心がひくついた。