私たちは大人になった

それから今に至るまで、この曖昧な関係は続いたままだ。
恋人同士じゃないけれど、好きだから会ってしまう。
けれど、恋人同士じゃないから、優の家には泊まれない。
度々くる連絡が恋人のそれのようにも感じるのに、今だ私に向けられることのない好きと言う言葉。
期待したらダメだと思うのに、会うたびに募る想い。
相反する感情がせめぎあう。
そうして、いつまでも迷ったままなのだ。

今ならわかる。
あのとき、違う言葉を伝えられたら今と違う未来が待っていたかもしれない、と。
想いが伝わったとしても、届かなかったとしても、今とは違う未来になっていたんだろう、と。
あのとき言えなかった言葉は言えないまま拗らせて、今では言うのさえ怖くなってしまった。
例え望んだ関係ではなくても、崩したくはない関係。

だけど、だけど……。

「優、いなくなっちゃうのか……」

呟いた言葉に、まぶたを下ろすと目尻から冷たい感触が流れた。
本当にこのままで良いの?
心のどこかで自分に問う。
その問いに答えてくれる誰かは当然誰もいなくて、この慕情にさえ挫けそうになってくる。
だけど、好きを止めるなんてことは理性でどうにもなることではなくて、結局は自分の気持ちを再確認するに終わる。


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