颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「で、コロッケの作り方は調べた?」
「はい。シンプルにじゃがいものコロッケでいいですよね?」
「キミ、仕事中に調べたの?」
「調べなかったら調べなかったで文句言うんじゃないですか?」
「当たり」


呆れてものが言えない。
このひとは結局、なにかいちゃもんをつけないと気が済まないタイプだ。きっと。


「マンションの1階にスーパーが入ってるからそこで買い物するけど、材料は?」
「じゃがいも、玉ねぎ、挽き肉、卵、小麦粉、水、パン粉です」
「あとは?」
「あと、って。なにかありますか? かぼちゃコロッケも作りますか?」
「ただのコロッケも作れないひとがなに言ってるの。付け合わせのキャベツ、彩りも必要だからトマトとブロッコリー。まさかコロッケだけ作るつもりでいたの?」
「ええ、まあ……」
「センスなさ過ぎ。はああ」


出会ってから最大のため息を吐かれた。そこまで気づかない私の女子力なさは認めるけど、そんなにがっかりしなくても。つまらなそうに正面のガラスを見やる桐生颯悟。まつげも長いし、この斜め45度の角度で見る彼の顔は本当にキレイだ。透き通る肌、サラサラの髪質、肌触りの良さそうなスーツ、上品な光沢を持つネクタイ。ほら、グラスを持つ指も長くて細くて美しい。水を口に含む仕草も。
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