颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「キミ、ちょっと。その姿勢で飲むのやめて。下品なんだけど。手があるんだから持つか、持たないならせめて手を添えてよ。女の子なんだから」
「はい。ごめんなさい」
「それと、付いてる」


桐生颯悟はカップをおくと、手を私の顔に近づけた。人差し指を伸ばして私の顔を指すように。その指先を追ううちにより目になって、ぼやけて追えなくなって、その指が私の上唇に触れた。

すうっと、撫でられ。
今度は下唇に移動して。

そのこそばゆい刺激に背中が粟立つ。

より目をもどすと目の前には桐生颯悟の顔。じっと私の瞳を見つめている。モデルみたいなキレイな顔立ち。だめだ、ドキドキする。唇が熱い……。

クスッと笑って彼は指を離した。


「ななな、なにをするんですか?」
「子どもみたいにクリームつけてるからとってあげたんだけど」
「ででででも! く、唇に触るなんて」
「さっきキスしたじゃん。なにをいまさら」


意地悪に笑うと桐生颯悟は再びカップを持ち上げた。なにもなかったようにミルクティを飲んでいる。私の唇は熱を持ったままなのに。


「あ、初めてだったとか?」
「ち、違います!」
「そう? なんか男、知らなさそうだし」
「失礼な! 経験ぐらいありますってば」
「へえ? 何人?」
「ふた……ちょっと! 何を言わせるんですかっ」
「ふたり、ね。物好きもいるんだね、仙台には」
「仙台じゃなくてひとりは北海……」
< 19 / 328 >

この作品をシェア

pagetop