颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
桐生颯悟はソファの前で顎を少し上げながらシュルシュルとネクタイを締めている。カウンターで番茶をすする私を横目に見下ろしながら。


「でも。仕事ですし」
「仕事、押してるの?」
「いえ」
「なら1日くらい大丈夫でしょ。有給で処理してもらえば勤怠に響かないし、お給料だって減らないし」
「そうじゃなくてですね、部屋にいても、その……つまんないと申しますか」


手首のスナップを効かせて桐生颯悟はネクタイをキュッと整えた。今日もスリーピース、ネクタイをベストの中に差し入れた。

ギロリと私を睨む。どうやら怒っているらしい。


「キミ、ワーカーホリックなの?」
「そんなことないですけど」
「依存症の一種なんだよね、アレ。仕事で得た成功体験が深層心理に作用して、仕事をすることで成功した気分になれる、とか。そんなに成功体験に乏しいの、キミ」
「そんなこと」
「あ、それとも現実逃避とか? 考えたくないことでもある?」


ああ、図星。
結婚、けっこん、ケッコン……。


「なに、オレに言えないこと?」
「いいいいいえ、そ、そんなことは……」
「じゃあ言えるよね? みのり?」
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