颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
*―*―*

シャワーを浴び、軽く食事を済ませ、電車で上野公園に行くことにした。美術館好きの私と、公園内でコケダマわびさびの世界と題したイベントが開催されて、和物好きの桐生颯悟との利益が一致したから。

美術館の入口でチケットを買い、入場する。現代アートの展覧会はさほど混んではいなかったので、ゆっくり見ることができた。桐生颯悟の隣を歩く。そういえば付き合い始めてからこうして出歩くのは初めてかもしれない。

デート。これがデートかあ。

そう意識するとなんだかドキドキしてきた。昨夜初めてアレをして、なんというかホンモノの恋人になって、求め合って……。


「これ、いいね」

ひとつの絵の前で急に桐生颯悟が立ち止まったので、ふつかりそうになる。手の甲同士が触れた。

手、つないでもいいのかな。
そういえば桐生颯悟と手をつないで歩いたことがない。そもそもデート自体が初めてなのだし。

つないでしまおうか。意識してしまったせいか、手汗をかいていた。気になる。このまま手をつないだら「なにキミ? オレの手になんか恨みでもある?」とか因縁付けられそうだし。さりげなくスカートに手のひらをこすりつけて……よし。

自分から指を伸ばそうとしたとき、桐生颯悟の手が私のその指をつかんだ。

思わず見上げる。
私と目があった瞬間、桐生颯悟の頬に赤みが差した。
桐生颯悟も手をつなぎたかったのかな?

そのときだった。背後から声がした。


「あの……」

振り返ると、いたのはスーツの男性。私よりは上だろうか。
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