颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
ああ、かわいい。これだから年下はたまらない。こんな風に甘えられてもスルッと許せてしまう。

桐生颯悟の手首をつかんで私の唇から離す。
その指先にちゅっと触れるだけのキスをする。ほら、もっと赤くなった。


「颯悟さん、好きです。一緒にいられないのはさみしいけど、この気持ちに変わりはありませんので」
「知ってる」


桐生颯悟は顔を傾けた。ホームでキスなんていいのかな。してくれるのかな。しばらくのお別れだし。

目をつむる。
でも次の瞬間、指の腹でブニっと押し返された。キスじゃなかったの?

目を開ける。桐生颯悟は私の背後を見ていた、ちょっと厳しい顔で。


「おはようございます、颯悟副社長」


私の横に並んだのはペーター徳田だった。襟の大きく開いたボーダーのカットソーにベージュのチノパン。丸いメガネも相まってラフな出で立ちだ。出向先では服装の指定はないと聞いていたけど、初日からいいのか?

桐生颯悟がここにいることに驚く様子もなく、ニコニコと笑っている。


「麦倉さんもおはようございます。今日からよろしくお願いしますね」
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