颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
ということは早百合さんはフリーだ。お子さんも独り立ちするのもまもなくだ。なら、桐生颯悟にとってはチャンスではないか?
*―*―*
マンションのエレベーターになんともいえない気持ちで乗り込む。
のぼりの加速度がついてピンヒールが床にのめり込んでいく。泥沼に足を突っ込んだかのような重たい感じ。前に進もうとしても足は埋もれていくばかりでズブズブと首まで浸かった気がする。
埃の出ない畳はないわけで。いろんな人生があるわけで。
そんな早百合さんの話を聞いてズンと重い気持ちになったのもあるけれど。
桐生颯悟を好きになりかけているのは事実で、彼の恋愛成就となるとやっぱり心は痛いわけで。
鍵を開けて部屋にはいると桐生颯悟が上半身裸でリビングにいた。白いバスタオルでガシガシと髪を拭いている。その逆三角形の広い胸は白くて筋肉質。細マッチョの体から湯気が立っていた。湯上がりホカホカの桐生颯悟。
目のやり場に困る。胸を見ないように桐生颯悟の顔を見るけれど、まだ濡れている髪から雫が落ちて、それがまた色っぽくて。
「おかえり。遅かったから先にシャワー浴びたけど」
「ぴ、ピンヒールだったから、や、やっぱり歩きづらくて。ハハ、ハハハ……」
「あれ? 化粧水なかったの? 手ブラじゃん」
「化粧水?」
「キミ、化粧水買いにいって化粧水買い忘れたの?」
「あっ!!」