教えて、空の色を
紅子ちゃんを見送ってから

閉店時間に店を閉める

21時……辺りはすっかり暗くて静かだった

店の中を片付けて、
一度シャワーを浴びて頭をすっきりさせてから
ペンキでの色づくりを再開しようとしたその時
スマートフォンが鳴った

『嵯峨紗由理』

紗由理……なんだ?

「ん?どうした?」

「あのっ河野さん…今っ、お店に来られますか?」

困惑し、少し緊迫したような声

「いーけど?」

そう答えると小さな声が聞こえた

「タスケテ…」

そこで通話が切れた

は?

これはのんびりしていられないと上着と財布だけ引っ掴んで走った

久々に走ったから途中から足は縺れそうだし
胸はいてぇし、さらには喉がヒーヒー言ってた

だけど…だけど……


はぁはぁ……

店まで行くと

(あれ?…)

もう閉店時間の筈なのに電気がついていて

それなのに誰もいない、そして入り口はロックされていた

…何かあったのかと心配になり
スマートフォンで紗由理を呼び出すと

奥からか、スマートフォンの音がガラス越しに聞こえた

だからガラス越しにもスマートフォンにも声をかけた

「おーい、紗由理…おーい、天才の河野くんだよ、おーい」

わざとのんびり声をかけると

するとガチャっとロックが外れた音がした

「入るぞー」

店内に入るとすぐにまたロック音

(ん?)

どこにいるんだろうとカウンターへ近づくと…
レジスターの下の方に蹲り、スマートフォンを握りしめた紗由理がいた

「よ、紗由……っ!な、どした…」

裏側に回り声をかけるとすごい勢いで紗由理が抱きついてきた

「こ、河野さ……」

痛いくらいの力加減だけど…

しっかり受け止めて優しく背中に手を回してやる

なぜなら、その身体が震えていたから…











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