素直になれない
卵焼きに少し癒された気分になった。


安い女だなー私。


「確かにね、砂から聞いた話だと、騙されたのはあんたの方だし?あんたが日向先生を嫌うのは分からんでもない」


私に乗っかり擁護してくれてはいるものの、真柴はヤツを先生と尊敬の念を込めて呼ぶ。


そりゃ事実先生だし、それ以外に呼び方もないだろうけど。


でも、それだけじゃない。真柴は、ううん真柴だけじゃない。この病院のスタッフはみんなヤツに好意的だ。


それでも唯一真柴だけは、ほんの少し私に同情もしてくれている。


だって、全然違うんだもん。


日向せ、ん、せ、いの、私と他のスタッフとの態度。


「砂!日向先生がご指名だよ、今度は何やらかしたー?」


チームリーダーの声がスタッフルームの扉を開けるなり、私に突き刺さる。


今度はって何?今度はって!


チームリーダーは溜息を残してすぐに扉を閉めたけど、不穏な空気はスタッフルームに残ったままだ。

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