偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「だからっ、今さら、ややさんにどんな話があるっていうんですかっ⁉︎」
沙知はますますヒートアップする。
野田は一応「上司」だが、営業が沙知たち営業事務を敵に回しては仕事にならないから強気だ。
「山田、ややと二人だけで話がしたいんだ。
悪いが、西村さんを……」
野田がそう言いかけると、ようやく稍が口を開いた。
「……なんで、さっちゃんが出て行かなきゃなんないの?」
静かだが、怒りを含んだ低い声だった。
「あたしたちが楽しく呑んだり食べたりしているところへ、呼ばれもしないのにいきなりやってきて、よくそんな勝手なことが言えるね?」
だれがどう聞いても正論だった。
「それは……申し訳ないと思っている。
だけど……電話もメールもLINEも着拒否されて、どうしようもなくて……こうするしかなかった」
野田は稍に必死で訴えていたが、二人は婚約破棄したのだから、当然のことだった。
「じゃあ……どうぞ。せっかくだから、さっちゃんにも山田にも聞いてもらおうよ」
実際には沙知と山田だけでなく、隣のテーブルの四人も耳をダンボにして聞いていたのだが。