偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
翌朝、稍が目覚めると、また智史は隣にいなかった。日課のランニングだった。
稍が朝食の支度をしていると智史が帰ってきて、シャワーを浴びたあと一緒に食べる。
午前中に収納家具がやってきて「物置」部屋の壁一面に、まるで造り付けかのごとく収まった。
それからは、一心不乱に所定の位置に物を入れる。
合間に稍の天沼のマンションに戻って、荷物を運び出す。
マンションの地下駐車場にある智史の愛車、メルセデス・ベンツGLAを出してくれた。
メルセデスのSUV車の中ではコンパクトなサイズで人気の車だ。都内で乗るにはちょうどいい。
「稍……今度、車で温泉にでも行くか?」
智史が前方を向いたまま言う。
普段は忙しくて「今はサンデードライバーや」と言いつつも、早く行けるのにと思った道が一方通行だったりして運転しにくい都内でも、スムースなハンドルさばきだ。
「えっ……ええのん?」
稍の顔がぱっと綻ぶ。
「おう、雰囲気が変われば、おまえも素直になって、おれとキス以上のことをしとうなるやろ?」
稍は完全スルーした。
そのあと、稍のマンションの解約の手続きをするために不動産屋へも寄った。
なぜか店の人から「ご主人」と呼ばれた智史が、稍の代わりにてきぱきと処理していた。