偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「おとうさん……あたし、智史と結婚します」
稍は単刀直入に、何の装飾もなく告げた。
ただ、そう告げた瞬間、智史と「恋人つなぎ」した手にギュッ、と力がこもった。
……「偽装」やけど、めっちゃ緊張するっ。
そのとき、ウェイトレスがオーダーを取りに来た。妹の栞がまだ来ていないが、先に頼むことにした。三人とも、ホットコーヒーにする。
「おれが正月に会うたときの相手と違うな?
……智史君は知ってんねやろか?」
父親の麻生 巧は、そう尋ねながら腕を組んだ。
今年の正月に野田と会わせてから、まだ半年も経っていなかった。
「もちろんです……再会してすぐに、僕が彼から稍を奪いましたから」
智史が姿勢を正して答える。
だが、そのような事実はない。
智史と会ったときにはもう、野田とは婚約を解消していた。
「偽装結婚」に信憑性を持たせるために、そういう「設定」にしたのだろう、と稍は思った。
……せやったら、前もって言うといてくれやんと。
「父子揃って、他人のものを獲るのが得意ときてるんやな?」
巧は口を歪めて苦笑した。厭な笑い方だった。