偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「『夫どころか一人息子にまでコケにされるなんて』って、怒ってたな。
父子(おやこ)揃って、そういうお顔がお好みなんやってことは充分わかったわ』とも言うてた。
そして、『あんたらが婚姻届を役所に出すのは勝手やけど、わたしがあんたらを認めることは絶っ対にない』と言い切っとった」

智史は口の端を歪めて言った。

「でも、おれは『あの頃』からずっと、大人になったら稍と結婚する気でおったからな。
稍とはこの歳になってやっと再会できたんや。
ここまで育ててもろたオカンには悪いけど、稍とまた離れ離れになるくらいやったら……オカンとの縁を切ってもええと思うてる」

そして、リビングに入ってからは解かれていた稍の手をがっちりと握り「恋人つなぎ」した。

「稍のお父さんにも挨拶に行ってきた。
案の定、あんたらのことで猛反対されてる。
……せやけど、稍もたとえ親不孝と言われても、おれと結婚できるんやったら、おとうさんと縁切ってええと言うてる」

……また「ウソ設定」やん。
いつ、だれが、そんなこと言いましたか?

智史の母親の激怒りは事実だが、稍の父親は別にそこまで反対はしていない。
自身の若妻のことで手いっぱいだからだ。

……だーかーらぁー、そういう「設定」やったら、(あらかじ)め言うといてよっ!

稍は心の中でめいっぱい智史に毒づいたが、表面上は健気にも智史を見つめて、しっかりと肯いておいた。

「偽装」がバレては元も子もない。
すべては智史の「復讐」のためだ。
たとえウソ設定でも「心は一つ」なのだ。

すると、智史が(とろ)けるような笑みを浮かべて、稍を熱く見つめた。

……おっ、智くんの「役者魂」に火がついたな。

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