偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「……稍、その指輪、綺麗やね。よう似合うてるわ」
みどりが稍の婚約指輪を目を細めて見た。
目尻に幾本かのシワが浮かぶ。
「智史が奮発してくれてん。〇・八八カラットで『やや』やねん」
稍は、自身の左手薬指を見つめて、ふふっ、と笑った。智史が元婚約者の康平より「奮発」してくれたのは事実だ。
智史がやさしげな笑顔で、稍の頭をぽんぽん、とする。
「相変わらず智史は、稍ちゃんにだけは甘ったるい顔するなぁ」
表に見せる表情からは、感情の起伏がよくわからない智史は、共働きの親にとっては手のかからない「理想」の子どもであったが、もしかして知らず識らずのうちに我慢させているのではないか、と却って心配した時期があった。
だが、智史は稍と一緒にいるときだけは「普通の男の子」の表情をしていた。
稍といるときだけは、智史が今なにを考えているのかが見て取れた。
洋史は息子と同じ顔で、みどりに微笑んだ。
目尻には、みどりよりずっと深いシワが刻まれる。