偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「うちのオカンはな……親父をハメて結婚したらしい。おれを身籠ったのは、避妊に失敗したんやのうて『確信犯』やったそうや。
何年つき合っても、親父にはまったく結婚してくれる気配がなかったらしい。
子どもでもできたら、親父が『責任』取って結婚してくれるんとちゃうか、って思いつめたんやそうや」
……そのくらい、結婚したかった相手やったんや。
「おれが中学生の頃、親戚のおっさん……和哉さんの親父と話しとったんや。
『やっぱし、あんなことしてまで結婚したバチが当たってんやろうな』って」
智史は、車間距離の開いた少し遠くの車を見つめて言う。
「おれは、おまえの家がうらやましかった。うちは冷え冷えしてたからな。
オカンはいつも仕事に追い立てられてて、余裕がなくカリカリしてて、おれは学校行事すら言い出せへんかった。
そんなとき、なんにも言わへんのに遠足や運動会の弁当をつくってくれたのは、おまえのオカンやった」
一見不器用そうなのに、気がつけば人が望むものを手にしているのは、実はみどりみたいなタイプなのかもしれない。
そして、なんでもできて器用そうに見えるのに、最終的に貧乏くじを引くのは登茂子みたいなタイプなのかも。
……あたしは、どちらになるんかなぁ?
今のあたしはどちらにも達してない「偽装結婚の相手」で「セフレ」やけど。