偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
オーダーしたスコッチとカクテルを、杉山がすっ、とコースターの上に置く。さらに、スコッチにはチェイサーが寄り添えられた。
稍の前に置かれたフルーツカクテルは、長崎県産の枇杷をメインに広島県産の瀬戸内レモンを絞ったものだと紹介する。
「枇杷はまさに六月が旬なんですよ。瀬戸内レモンは露地栽培がぎりぎり五月いっぱいまでで以降はハウス栽培になりますから、今シーズンの生レモンの搾りたてはこれが最後ですね」
まだ六月に入ったばかりだったので呑めるのだ。
「アルコールのベースはなにかしら?」
麻琴が杉山に尋ねる。
「原産は中国なんですが、枇杷の学名『Eriobotrya japonica』にちなんで日本酒ベースにいたしました。兵庫の地酒をつかっております」
稍が生を受けた土地だ。
カクテルを一口、呑む。
枇杷の純朴な甘みの中に、瀬戸内レモンの爽やかな酸味が効いていて、とても美味しい。
「美味しくて飲みやすくて、何杯でも呑めちゃいそうで怖いですね」
稍は満面の笑みでこのカクテルを讃えた。
「アルコールは高めですからね。
よっぽど心をお許しになる男性以外の前では、お控えください」
杉山がいたずらっ子のような微笑みを残して、下がって行く。左耳のダイヤのピアスが照明の光を受けて、一瞬光った。