偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

今日の岡嶋 美咲は、ふんわりとアップにした髪に、パフスリーブの部分がシースルーのトップでボトムが膝丈のペプラムスカートになった、サーモンピンクのカクテルドレスを着ていた。
ボートネックから見える華奢な鎖骨は、バスタブに浸かったら水が溜まる派だな、と稍は思った。

「岡嶋先輩、全然変わりませんやん。うらやましすぎます」

とても、稍より二歳上のそろそろアラフォーと言ってもいい年齢の人には見えない初々しさだ。

「麻生ちゃんこそ。すぐわかったけど……綺麗になったなぁ」

彼女は懐かしそうに、目を細めた。

「あたし、今は『岡嶋』やないんよー」

ふふっ、と笑う。

……あ、結婚しはったんや。

左手薬指にはエンゲージリングとマリッジリングと思しき「象徴」が、シャンデリアのまばゆい光に反射して、キラキラを通り越してギラギラと輝いていた。

エンゲージリングは、センターのダイヤモンドの脇に四つの小さなダイヤモンドが配されており、アームにもメレダイヤが施されている。
さらに、マリッジリングにも、優美な曲線に沿ってメレダイヤが散りばめられていた。

彼女の夫となった人は、相当がんばったものと見受けられる。

「子どもも一人、産んだし」

しあわせそうな満面の笑みになる。

……ええっ、この風貌で、一児の母っ⁉︎

「あっ、『岡嶋』から『天野(あまの)』に変わって、それから『岡嶋』に戻って、今は……」

「先輩、余計なことは説明しやんでよろし」

稍はぴしゃり、と制した。

ど天然ぶりは健在だ、と稍は思った。
黙っていたら「処女か⁉︎」って見紛うほどあどけなさ全開の童顔なのに、だれが聞き耳を立てているか知れぬ公衆の面前で、バツイチを(さら)すとは。

心に浮かんだことは言わずにはいられないのは、相変わらずだ。

だが、そんな「先輩」だからこそ、心を打ち解け合えたのだが……

「せやから『美咲』でええよー。
『先輩』っていうのもやめて。恥ずかしわぁ。
あたしも『ややちゃん』って呼ぶし」

「わかりました。了解です……『美咲さん』」

わたしたちは社会人になったのだな、と稍は改めて「大人」になったことを実感した。


「……おい、美咲」

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