君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。


少し家から遠かったけれど、幼かった頃は母さんとよく来ていたこの祭り。

それが今、好きな子と来れているって幸せなことだよな。


前の世界では味わえなかったことを、しっかりと噛み締めて、確かめるように手を握りしめると心なしかぎゅっと握り返してくれた気がした。

色々な音楽に合わせて上がる花火は感動的で、逢の好きな曲が流れた時は口ずさんだりした。

「…綺麗」

大きな火花は咲いたように紅色に染まり、視界いっぱいに広がる。

咲いては散って、散っては咲いて。


まるで生き物のように動いて、綺麗で、とてつもなく、儚い───

< 163 / 359 >

この作品をシェア

pagetop