君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。


「悩みなんて小さくても大きくても絶対誰もが何かしら持ってて、それを抱え込んでる。それに押しつぶされそうになったら、空を見るんだ」


悲しくなったら、空を見上げて。


俺がいなくても

君がいなくても


きっと世界が滅んでも


空はいつも綺麗だよ。


曇っていても、雨が降ってても。


雷でも、雪でも。



見上げれば見える空はきっと綺麗なんだ。


そして青く澄み渡る空は、この世で一番、綺麗なものなんじゃないかって俺は思う。


「難しくて、言葉ではなんて言えばいいかわかんねぇけど、空が綺麗だって思えること…俺は幸せだと思う」


「那知って意外とロマンチストだよね」

「……うっせ…」


頬を赤くした俺にクスクスと笑った彼女は、長いまつ毛を伏せて、冷たい風が髪を揺らす。


「ふふ、うん、じゃあ…今日も空が綺麗だね、那知」


「…ふ……うん、幸せだな…逢」


俺たちだけの合言葉のように、秘密話のようにふたり向き合って小さく笑う。


月明かりで見えた涙のあとを優しく拭って、もう一度夜色の空を見上げた。


ふたり泣いた夜に見上げた空は、星々が俺たちを照らして、



月が、綺麗だった。

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