君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。


お皿の上に置かれた小さなフォークを手に取って、ひとくち口に入れる。


「……うまい…すっげぇ、うまい」


バレンタイン。


「…よかった、ゆっくり食べて」


前の世界の今日。

君と別れて、それどころじゃなかった。


翌日、彼女は俺にチョコレートをくれようとしていたと、彼女の父親から聞いた。


口の中に甘く、少し苦く広がる。



「今まで食べたチョコの中で、一番うまいよ…」


隣で、何故俺が泣きそうなのかわからないと言った表情の逢を抱き寄せる。


「…ありがとう、逢。今から返すよ…何がいい?」


「………ぎゅーって、して欲しい」

きつく抱きしめて、まだ俺はここに居ると確かめた。


「…それから?」





「…………キス、して…」




少し離した逢の体をまたそっと抱き寄せて、額にキスをする。


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