愛しているなんて言えない
それは同期組の内科医の先生だけど、左手の薬指には指輪が光っている。

若い時には、付き合った事もあったけれど、どうして別れてしまったのか、もう理由も忘れてしまった。


「今日は暇そうだな。」

「本当?よかった。さっき手術が終わったばかりなのよね。」

後で時間を見て、手術が終わった患者さんを見舞ってこないと。


そんな時だった。

救急車が外来に到着した。


「さて。お出ましになった。」

元カレの先生に肩を叩かれ、私は救急車に急いだ。

外来を出ると、担架に男性が乗っていた。

「どうしました?」

救急救命士に聞いた。

「自宅で急に倒れて、頭を打ったそうです。」

その割には、担架に乗っている男性は、目を開けて元気そうだ。


< 6 / 18 >

この作品をシェア

pagetop