輪廻ノ空-新選組異聞-
「お待たせして申し訳ありませんーっ」

器のものが溢れない程度ながら駆け込んだわたしに、「遅ぇ!」と言いつつも…

「今日はやっとおめぇも立派に前進したんだってな!」

という声も重なって。

「巡察じゃあ、運がいいのか斬り合いを免れてたもんな」

確かに。と、器を置きながら頷く。

「お猪口と徳利は行き渡ってるみたいですが、この肴は各自好きに取って下さい」

沖田さんも器を並べながら指示を飛ばし。

「近藤局長、お待たせしてすみませんでした」

近藤さんの前で詫びると、近藤さんは大きな口で笑って。

「総司がお前さんが何か作っているらしいと言っていたのでな、楽しみにしていた」

なごやかな空気の中、近藤さんの音頭で乾杯。

見渡す面々は流派は問わず、江戸で天然理心流の道場・試衛館に集っていた面々。

近藤さん
土方さん
沖田さん
井上さん
永倉さん
原田さん
藤堂さん
山南さん
齋藤さん

そしてわたし…。
近藤さんは局長で新選組のトップ。山南さんは総長。土方さんは副長。他は皆、十番隊まである小隊の組長。沖田さんが一番隊、永倉さんが二番隊、齋藤さんは三番隊、井上さんは六番隊、藤堂さんは八番隊、そして原田さんが十番隊。

良く考えたら…いや、考えなくてもさ、凄い面々じゃないか!私だけペーペーの平隊士かぁ。いや、モチロンそれでいいんだけど!ここに居てもいいのかって気になるよ。

なんて一番下手の自分の膳の前に腰を下ろしながら溜め息。

「疲れたか?」

「は?」

見たら隣は齋藤さん。
あんまり口を聞いたことがない。何だか…試衛館の面々の中にあっては、かなり無口というか…あんまりつるんでない様子だし、怖そうな人なんだ。

「昨夜は厨に籠りきり、初詣の後は巡察。仮眠後は伊木と稽古、散策。更に初の斬り合い」

つらつらと述べる言葉に唖然。
私のストーカーか!?と、ツッコミたいよ!

怖くて出来ないけど。
< 61 / 297 >

この作品をシェア

pagetop