輪廻ノ空-新選組異聞-
「言われてみると…疲れているかも…。皆さんをお待たせしたり…失態が山盛り…。すみません」

わたしはペコンと頭を下げた。

「前々から気になっていたのだが…お主のその口のきき方は頂けんな」

「は…い」

何、急に…!

「新年だからこそ言う」

途中で言葉を濁し過ぎる、と続いた。

「きちんと話せ。言の葉には魂が宿るのだ。大切にしろ。それに気合いも籠らんだろう」

いまいち意味が解らない。

という顔をしていたみたいで、齋藤さんは私のさっきの言葉を言い直した。

「言われてみると、疲れているかも知れません。皆さんをお待たせする等、失態も沢山致しました。申し訳ござりませぬ」

確かに…ゆるゆるな話し方だった…!
目から鱗!!

「お主は、かも、で切ったり、言葉を省略し過ぎだ。言の葉にいい加減だと、人となりそのものもいい加減だと思われよう。言の葉に真実味もこもらん」

「はい。ありがとうございました、齋藤先生。今日から気を付けて参ります」

「よし」

にこ、と僅かに笑みが浮かんだ…!

「素直はお主の美点だ。まぁ飲め」

わたしはハッとした。

「ここはわたしから注がせて下さい!」

慌てて徳利を手にして齋藤さんの猪口にお酒を注いだ。それをキュッと飲んだ齋藤さんは、わたしの猪口にお酒注いでくれて。私もキュッと飲んだ。

喉から胸の奥が熱くなる。
思わず溜め息をついて、ふと周りを見たら、「俺も俺も」と皆が徳利を持って集まってた。
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