BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「へえ。自分が助けられたから、今度は自分が助けるって立派な動機だ」
「いえ、本当は違って……。や! 違わなくはないんですけど」

 祥真の反応は皮肉めいたものではなく、感心し納得するようなものだった。
 月穂がそれをすぐに否定し狼狽えるものだから、祥真は目を丸くした。

「もちろん、自分がそうされたように誰かの手助けをできるならいいな、って思っています。ただ……それだけじゃなくて」

 月穂が自分の話をするのは、あれ以来初めてだった。それなのに、ごく自然に胸の内を口にすることができていた。

 もしかすると、祥真との出会いはインパクトがあり、自分を助けてくれる存在だと深層心理が働いているのかもしれない。
 加えて、これまで見てきた祥真の言動は、取り繕うことなどしない、素直なものだと肌で感じたのだろう。

「今、誰かに寄り添うことで、あの頃の自分を肯定しているというか。それと……あのとき話を聞いてくれたスクールカウンセラーに会えるかなあって」

 休憩時間とはいえ、すっかり仕事場にいることを忘れ、話し込んでしまっていたとようやく気がつく。
 月穂はばつが悪い思いで苦笑いを浮かべた。

「話が逸れちゃいましたね」

 そうして睫毛を伏せ、話を本題に戻す。
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