BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「私の仕事は、いつも同じ場所にいることです。逆に隼さんは、いろいろな場所へ飛ぶことですよ。もしも周りとの相違に違和感に捕らわれていると言うなら、もっと簡単に考えるのはどうでしょう」

 自分に自信がある人間のほうが少ない気がする。

 それは月穂に相談してくる人々がそういうタイプが多いせいもあるかもしれないけれど、なにより自分がそうだったから。

 月穂は居場所をたったひとりにでも、誰かに肯定されるだけで、救われた気持ちになれることを知っている。

 月穂の言葉を聞いた祥真は、まだわだかまりのあるような腑に落ちない表情をし、口を開かない。そんな祥真を見て、月穂は思わず笑う。

「あなたは飛行機が好きで、乗客の命の重みも忘れていない。ほかに、なにが必要なんですか?」

 祥真は月穂の微笑みに目を奪われる。
 月穂はさらに優しく目を細めて言った。

「あっ……。あの、これも私の長いひとりごとです」

 元々カウンセラーは、無理やりクライアントの悩みについての答えを導き出すものではない。
 しかし、今の月穂はそんなセオリーなどすっかり忘れ、単に自分が思ったことを素直に、一方的に語った。

(鬱陶しいって思っているかも)

 我に返った月穂は、祥真にとっては押しつけがましい意見をしてしまったかもしれないと反省する。

 けれど、心配は無用だった。

「なるほど……。誰かに話をするのも悪くないな」

 祥真は小さな声でそうつぶやいた。その言葉に、月穂は自然と笑みが零れる。

「はい」

 祥真は急に恥ずかしくなったのか、月穂から目を逸らしてボソッと言う。

「まあ、誰でもいいわけじゃないけど」

 月穂は、彼が自分を認め、心を開いてくれているのかと思うと胸が高鳴った。
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