誠の華−ユウガオ−
勇さんには会いに行ったが総司にはまだ会ってなかった。
会うのが少し怖かったんだ。
私の身を案じて待っていてくれると言うのに。
「まだ…会ってません」
情けなくて声が小さくなるが歳さんにはちゃんと届いていた。
「あいつはもう長くない」
嫌だ、信じたくない。
総司は元気になった。
回復の兆しが見えている。
その言葉が聞きたかった。
「あいつの側にいてくれ。あいつにはお前が必要だ」
「歳さん、やめてくださいよ。総司は死にません。死ぬはずかありません。あんなに強いんだから…死ぬわけがない」
そうだ。
私が何年も毎日欠かさず稽古をしたって総司の足元にも及ばないくらい彼は強い。
彼は日本一強い男なんだ。
「ふふ…総司が死ぬなんて、天地がひっくり返るような出来事だよ」
「あいつだって人間なんだよ!!総司だって死ぬんだよ!!!辛いことから目を背けてんじゃねえ!!!お前は総司の女なんだろ!!お前がしゃんとしてねえでどうすんだ!!生ぬるいこと言ってねえで目ぇ覚ましやがれ!!!」
私の肩を強く揺さぶりながら鼓膜を劈くような怒号を挙げる歳さん。
ここまで怒られたことはいままでなかった。
勝手に京にきたときだってここまで怒らなかった。
「歳…さん……、私…怖いよ……。総司がいなくなったらどうしたら良いの?無理だよ。やっと恋仲になれたのに…何で?何でみんな私からいなくなるの?私は…どうしたら良い?分からないよ……」