誠の華−ユウガオ−
空は生憎の雨模様。
満開に咲き誇る桜も雨の勢いで花弁が落ち、桃色の絨毯が出来上がっている。
少女の履く黄色の長靴の裏にはそれが張り付いている。
『さあ着いたよ』
老人の声に少女は首をかしげる。
そこには着物を着た強面の男の石像があり、達筆な字で何かが書かれている。
『おじいちゃん、ここはどこ?』
少女が老人を見上げるとさっきまでの穏やかな笑みを消し、硬い表情で石像を見つめる姿があった。
『麗華、おじいちゃんはよくお前に新撰組の話をしたね』
うん、と少女が頷く。
『じゃあそこで一番偉い人は誰だったか覚えているかい?』
『こんどういさみ!』
勢いよく答えた孫娘の姿に老人は少し表情を緩める。
しかしそれも一瞬だった。
『ここはね、近藤勇が死んだ場所なんだ』