誠の華−ユウガオ−



『そうだね。ただ一つ言えるのは…近藤勇が生きた時代には二つの善と二つの悪がある』


『ふたつのぜんとふたつのあく…?』


老人は苦笑すると良いことと悪いことのことだよ、と説明する。


『近藤勇と近藤勇を殺した人は自分が信じているものが善だと信じて命をかけて戦っていた。私達には信じ難い話ではあるが彼等が命を懸して戦ってくれたから今の平和な時代があるんだよ。だから今の私達に彼等のどっちが悪いかなんて言える資格はない。どちらも正しかった。でも国を正すには道を一つに絞らなければなかったんだ』


だいぶ噛み砕いて説明したつもりだったがやはり少女にはまだ難しかったようだ。


だが一生懸命理解しようとしているその姿が健気で可愛らしく老人の心を揺さぶった。


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